賃金は、雇用契約の内容である労働条件の中でも、最も重要な労働条件になります。
そのため、労働者の賃金を正確に計算する必要があり、賃金を正確に計算するためには、正確に労働時間を把握、記録し、それを正しく賃金に反映させなければなりません。
労働時間の端数処理の定めは、昭和63年3月14日付の労働省通達 基発第150号で、
次の方法は、常に労働者の不利となるものではなく、事務簡便を目的としたものと認められるから、法第24条及び第37条違反としては取り扱わない。
1か月における時間外労働、休日労働及び深夜業の各々の時間数の合計に1時間未満の端数がある場合に、30分未満の端数を切り捨て、それ以上を1時間に切り上げること。
と定められており、普通労働時間(1日8時間、1週間40時間以内の労働時間)については、端数処理方法の記載はなく、時間外労働と休日労働、深夜労働時間については、それぞれ1ヶ月分(賃金計算期間)の合計時間を出した上で、30分以上は切上げ、30分未満は切り捨てるという処理なら差支えないとのことです。
労働時間の端数処理の定めは、この通達しかなく、この通達しかないということは、逆にそれ以外は法的には一切認められないということになり、労働基準法第24条1項に、
賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。
と定められているように賃金の全額払いの原則(労働基準法第24条1項)に従えば、1分単位で賃金に反映させなければならないということになります。
例えば、1分の遅刻を15分の遅刻として賃金カットをするというような処理は、賃金の全額払いの原則に反し、違法になります。ただし就業規則で遅刻などを減給の制裁として定めておけば、問題ありません。
・普通労働時間(1日8時間以内又は週40時間以内の労働時間)は、端数処理ができない。
・法定労働時間を超えた労働時間は、1ヶ月分を合計し、30分以上は切上げ、30分未満は切り下げ。
・深夜労働時間(22時~5時)の労働時間は、1ヶ月分を合計し、30分以上は切上げ、30分未満は切り下げ。
・休日に労働した時間は、1ヶ月分を合計し、30分以上は切上げ、30分未満は切り下げ。