労務管理

離職票は退職者の次の転職先がすでに決まっていたら、交付しなくてもいいの?

離職票は、退職者が「離職票は不要」と言わないかぎりは、必ず退職者に交付しなければなりません。




離職票とは、雇用保険の基本手当(失業手当)などをもらうための書類で、雇用保険に加入していた従業員が退職した際に、その退職した従業員に交付しますが、退職者の次の転職先がすでに決まっていたり、結婚退社だったり、うつなどによる退職だからといって、会社や事務担当者が離職票は不要と勝手に判断するのは禁物です。




雇用保険法施行規則第7条3項には、

事業主は、第一項の規定により当該資格喪失届を提出する際に当該被保険者が雇用保険被保険者離職票(様式第六号。以下「離職票」という。)の交付を希望しないときは、同項後段の規定にかかわらず、離職証明書を添えないことができる。



と定められており、退職者(被保険者)が離職票の交付を希望していなければ、離職証明書の作成や提出は不要になります。




離職証明書とは、ハローワークから離職票の交付を受けるために会社が作成しハローワークに提出しなければならない書類です。




この条文では、あくまでも退職者が離職票の交付を希望しない場合に離職証明書の作成・提出が不要と定められているのであって、次の転職先が決まっていたり、結婚退職をしたら、離職証明書の作成・提出が不要になるとは一言も書かれておりません。




雇用保険の被保険者期間(加入期間)は、前職の被保険者期間と次に就職する会社の被保険者期間が通算できる場合があり、通算するためにはそれぞれの会社の離職票が必要になります。




また雇用保険の基本手当などは、年齢や被保険者期間、離職理由などによって手当がもらえる日数(所定給付日数)が90日分とか180日分とか与えられますが、この日数は、原則、1年以内に使い切る必要があります。




離職票の交付が遅れてしまいますと、1年以内に与えられた日数分の失業手当を使い切ることができなくなり、そうなると損害賠償のお話しになってしまいますので、離職票は本人に要不要を確認した上で、不要でなければ、早急に交付しなければなりません。




また雇用保険法施行規則第7条3項のただし書きには、

ただし、離職の日において五十九歳以上である被保険者については、この限りでない。



と定められているように、退職された従業員が59歳以上の方の場合には、本人が「離職票は不要」と言っても、離職票は交付しなければなりません。




これは、59歳以上の方は、雇用保険の高年齢再就職給付金の受給要件に該当する可能性があるからです。




また当初、「離職票はいらない」と言っていたにもかかわらず、後日、離職票の交付を請求するための離職証明書の交付を求めた場合には、事業主は、その退職者に離職証明書を交付しなければなりません(雇用保険法施行規則第16条)。



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i-sr
特定社会保険労務士。社会保険労務士事務所開業7年目。経験領域:社会保険手続き、給与計算、労務管理、労務相談、助成金申請、就業規則作成改定など。 趣味:音楽◎ ドライブ〇 読書△ 
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